受動喫煙防止対策で『完全禁煙』にすると飲食店は客足が遠のくのか

飲食店では、新型コロナウイルスの影響による来店客の減少と、4月1日に改正された健康増進法、両方の影響でさらなる売り上げの低下を懸念している店舗も多いのではないでしょうか。

また、飲食店の中でも居酒屋や喫茶店は子連れで入りやすいファミレスやカフェなどよりも喫煙率が高い為、特に『完全禁煙』へ踏み込めないという店舗も多いはずです。

しかし、改正健康増進法が施行され、多くの飲食店で飲食サービスを受けながら喫煙をすることができなくなるという事実はお客側も知っているはずですが、実際『完全禁煙』にすることによる客足の低下は起こるのか気になります。

そこで本記事では、飲食店が『完全禁煙』にすると客足は遠のくのかという疑問について言及してまいります。

完全禁煙の定義とは

そもそも完全禁煙とは『全面禁煙』ともいい、飲食店の店舗内、もしくは敷地内すべてを喫煙禁止にすることです。

現状、今年4月に施行された改正健康増進法では屋外での喫煙に関する具体的な規制はありませんが、出入口付近での喫煙などによる受動喫煙を招かないよう、対策をとる努力義務が課せられています。もちろん仮に出入口付近や多くの人が行き交う場所へ灰皿を設置していても、それが屋外なのであれば、すぐに処罰の対象とはなりません。とはいえ、お客からのクレームが重なったり、注意を受けたのにも関わらず改善が見られなかった場合などは罰則の対象となる可能性があるので十分に注意しましょう。

つまり、飲食店でいう『完全禁煙』や『全面禁煙』とは、屋外を含まない店舗内をすべて禁煙にする措置のことを指しています。

完全禁煙にすると売り上げは低下する?

このように、店舗内をすべて禁煙にするということは、これまで時間帯分煙や、仕切りなどでの分煙、喫煙席などを作っていたお店でも、すべて禁煙席にするということです。

そうすると居酒屋や喫茶店など業種によっては喫煙客のお客が多い業種もあり、客足が遠のいたり売り上げが低下する可能性も懸念されます。ここからは、完全禁煙にしたことで売り上げが低迷してしまった店舗の事例について解説していきます。

串カツ田中

串カツ田中はほぼ全店で2018年6月に全面禁煙化に乗り切りました。2018年10月の既存店売上高は前年同月比8.2%減と大きく落ち込み、前年割れは8カ月連続になったといいます。 しかも、マイナス幅は決して小さくはなく、4月が8.3%減、5月が8.2%減、6月が5.5%減、9月が6.5%減と、大幅マイナスの月が続出しました。

全面禁煙を行った2018年6月は前年比2.9%とマイナスになりましたが、その後7月には1.9%増、8月は9.7%増と、全面禁煙を始めた当初の集客は好調であったのです。理由として考えられるのは、客層の変化であり、これまでたばこの煙が原因でなかなか足を運ぶことができなかった子供連れや家族などの新たな客層が訪れたことが考えられるでしょう。一方、会社員や男性グループなどの集客が減少したため、結果的に好調が長く続かなかったということが分析できます。

というのも、居酒屋という業種はほぼ『お酒を飲む人』『楽しくおしゃべりがしたい人』が良く訪れる場所だというイメージを持っている方が殆どなのではないでしょうか。ということは、最初は興味本位で『禁煙になったから』といって足を運んでいた家族ぐるみの客も、結局はファミレスやカフェなどが雰囲気的にも入りやすいとなるわけです。

サイゼリヤ

低価格にイタリアンを楽しめるサイゼリヤは多くの方が一度は足を運んだことがあるでしょう。サイゼリヤの場合、2018年7月下旬に全国約1000店舗のうちの約300店舗で全席禁煙が始まり、2019年9月までに全店での全席禁煙化を完了しました。禁煙化が始まった2018年8月から2019年2月までの7ヵ月に限っていうと、客数の減少率は2.0%となっています。

先ほどの串カツ田中の例と比べればさほど客数は減少していないように思えます。しかし、サイゼリヤはワイン1本が1000円、デカンタが200円、グラスワインが100円とアルコールの価格がとても安いため、これまでも「ちょい飲み」で来店する顧客が多いことで知られており、ちょいのみ&喫煙で来店したお客が減少した可能性もあるといるでしょう。

尤も、お酒とたばこをセットで趣味嗜好の一つと考えている喫煙者も多く、安価にお酒を楽しめる場所は喫煙とセットの休憩である場合もあります。それが今後できなくなるとなれば、コロナ禍による客足の減少も相まって更に前年比の来客数が落ち込む可能性もあるかもしれません。

完全禁煙のデメリット

とはいえ、完全禁煙にすれば、新しい客層にアプローチできたり新規顧客をつかむきっかけになる可能性もあります。喫煙者の客足が遠のき、売り上げが低下するという理由以外に完全禁煙のデメリットは何があるのでしょうか。

客単価が下がる可能性がある

お酒を飲みながら喫煙をしているお客は比較的お店にいる時間が長いと感じている方も多いでしょう。お店に滞在する時間が長ければ長いほど、1人のお客に対する単化が上がる可能性があるのです。

しかし、滞在時間が短くなってしまうことで客単価が下がってしまうこともあるかもしれません。特に、平日などお客の少ない曜日では一人一人の単価を上げて、売り上げにつなげていきたいところですが、難しくなる可能性もあるでしょう。

ポイ捨てなどの問題が増える

店舗等の全面禁煙において、よく懸念点としてあげらるのが『ポイ捨て問題』です。屋内では喫煙ができず、外にも喫煙ができるスペースがないとなりますと、屋外で喫煙をし、そのままポイ捨てをしてしまうお客が出てくる可能性もあります。

そうすると、他のお客からのクレームはもちろん、近隣のお店からのクレームにつながることも考えられますので、十分に注意が必要です。

受動喫煙防止対策を行っても売り上げアップを図るコツ

このように受動喫煙防対策として完全禁煙を行うと、売り上げ低下、来客数の低下につながる可能性があるということがわかりました。

喫煙客や、喫煙客を交えた複数人での来店の多い居酒屋や喫茶店にとっては、喫煙者も非喫煙者も双方が快適に過ごすことができるお店作りを行っていく必要があるのです。

ここからは、受動喫煙防止対策を行いながらも売り上げアップを図るコツについて解説していきます。

分煙をする

1つは、分煙をするという方法です。分煙にはいくつかの種類があり、紙巻きたばこも加熱式たばこもどちらも喫煙ができる喫煙専用室を構築する方法、加熱式たばこのみを喫煙できるエリアを構築する方法、分煙ボックスを設置して分煙をする方法などがあげられます。

ただ、注意しておきたいのが、紙巻きたばこの喫煙ができるエリアについては、そのエリアに限って喫煙以外の行為を行うことはできないため、飲食サービスの提供も禁じられているという点です。一方、加熱式たばこの喫煙室については飲食サービスの提供も認められています。

居酒屋の分煙については下記の記事を、

居酒屋も原則屋内喫煙禁止に。居酒屋を分煙するメリットはこれだ!

紙巻きたばこと加熱式たばこの喫煙室の違いに関しては下記の記事をそれぞれご確認ください。

加熱式たばこと紙巻きたばこの専用喫煙室の違いと設置するときの注意点

屋外に喫煙所を設置する

どうしても屋内に喫煙室を構築する幅がない、お客がいちいち席を立つ必要があるのであれば屋外での喫煙も同じだという方もいらっしゃるでしょう。

しかし、前述にも申し上げたように、屋外に喫煙所を設置すると出入口の開け閉めの際に煙が屋内に侵入してしまう可能性もあります。ですので、屋外での喫煙を推奨する場合は屋外に喫煙所を設置し、屋内へ煙が流れ込まないよう注意することが重要です。

屋上やテラスなど、屋外への灰皿設置に規制はある?

まとめ

本記事では飲食店において店舗を完全禁煙にすると客足は低下するのかという観点から、客足を低下させないための分煙対策方法について解説いたしました。

本文中にサイゼリヤの完全禁煙の例を解説しましたが、サイゼリヤは今後全席禁煙になったお店に、今後は新幹線と同じように喫煙ルームを設けていく方針だそうです。全席禁煙のマイナスが大きい業態にとって、分煙とは非常に重要な対応策ともいえるでしょう。

このようなことから、今後は喫煙者に支持されているお店は喫煙ルームを設置するほうが売り上げアップにつながるという見方が広がっていくかもしれませんね。